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ココ・シャネルのパールネックレス
07.12.2010
Illustration by Yuki Kitazumi
まずはじめにこの場を借りてお詫びをさせてください。ガーリー評論家を自称しておきながら、実はアタクシこの件についてはまったくと言っていいほど関心がございませんでした。
ご当地フランスではジャンヌ・ダルクに並ぶ英雄ガーリーとして。ファッション界ではモードの女神と崇められるガーリー・アイコンとして。カンボン通りのガーリー本舗「おココ」の異名を取った(かドーかは存じませんが)ガブリエル・ココ・シャネルその人が、今回お届けするガーリー様でございます。ココが遺した不朽の名作の数々(註1*)は、それが彼女の発明品だとは意外に知られていないほど、現代では当たり前な存在です。
遠い昔「女に生まれて来たからには興味を持つべきなんじゃね?」と思い立ち(なぜか)ココの自叙伝を捲ってみたこと。「初めてのブランドバックならやっぱしシャネルっしょ!」と(なぜか)一途に決め、清水の舞台から飛び降りる心境で手に入れたこと。こんなベタな体験談がアタシにだってあるのです(苦笑)。でもなんだか全般にイケイケな印象が強過ぎて、シャネル大好き♥と言えるテンションにまでは達しなかった。だから通り一遍なシャネル、及び、シャネル製品についての豆知識はあるんですが、猫も杓子も的な彼女に対する評価へも(なぜか)反発していた万年反抗期のアタシにとって、ココは今までスルーしてきた女の先輩のひとりだったのです。
そんなへそ曲がりの若年期も無事終了し、中年期を迎えた当店バイヤーが、突然、雷に打たれたかのように彼女にぐいぐいーっと惹かれてしまったのはごく最近。まるで以前は意識してなかったオトコとの再会で、アレヨアレヨと恋に落ちてしまうとゆー、思いもがけぬ出来事が我が身に降り掛かったとでもいうのでしょうか(笑)。ケミストリーの理由はあるひとつの言葉との出逢い。シャネル女史の金言は過去にも目にすることはあったけど、せいぜい「なるほどねー」とか「仰るとおりでございます」という類の、サクセスを極めた先達のレクチャー的なポジションで、決して心を掴まれるようなことはありませんでした。
私の頭を切ってみてごらんなさい。中は13歳よ。
これは彼女が若き日のトルーマン・カポーティに語った一言。誰とも違う人生を誇りにしていたココは回顧録を後世に残すことを切望し、晩年は躍起になって良い書き手を捜し続けたんだそうです。そのココが40歳以上も年下の天才作家にオファーしたということですら斬新なのに、こんなイカした表現で自己分析しちゃうなんて、まったくフルった頭の持ち主だと思いませんか?残念ながらカポーティによるシャネル伝は実現しなかったけれど、こんなふうに言われて作家の創作意欲が刺激されなかったわけがない。きっとその後のクリエイションにも深く影響しちゃったのでは?と老婆心な妄想を抱かずにはいられないくらいです。
じゃあなにがいったいココを思春期の少女に留まらせていたのか?
それは時代を先読みし、快進撃を撃ちまくったビジネスへの挑戦?それとも苦労した少女時代に感じた身勝手な大人や冷たい世間への怒り?いえいえ、彼女を13歳に留まらせた原因はガーリーの真骨頂である「恋の賜物」なのでありました。
アムールの国フランス女。まだご婦人達がコルセットと共に古い因習に縛り付けられていた19世紀に、自由恋愛の先駆者でもあったココ。浮名を流した紳士達は、アーサー・カペル(註*2)をはじめ、実業家や貴族、芸術家という肩書きを持つロマンチックで才気溢れるスノッブスばかり。そしてバイヤーを唸らせた彼女の文章表現に至っては、詩人のピエール・ルヴェルディとの恋愛中に指南を受けて独学で学び、ついにはルヴェルディをも驚かすほどの免許皆伝の腕前になったんだとか。うーん、付き合う男によって新しい才能をどんどん開花させていった柔軟さと貪欲さは、恋を味方につけ、お相手と良い関係を保つための努力に支えられた最強の女力。子供のような無邪気さでメンズ・エキスを吸い取っていく(笑)彼女は、殿方達の目にはどんなに新鮮で魅力的に映ったことでしょう。
そのシャネルの恋の遍歴はドラマチックなエピソードに溢れています。最愛の恋人を二人も亡くしてしまうという不幸。そして男性から贈られる究極の愛の形として望んだにも拘らず、一生得られることはなかった結婚。でも得られなかったからこそ、たくさんの愛の想い出と空想の中で遊び、それを枯らすことなく創作の中に生かし続けられたんじゃないかと思うのです。夢中になった詩作のように、リアリティをファンタジーに置き換え、悲しい恋の結末を誰とも違うオリジナルな愛の結晶として、彼女ならではの美意識に昇華させたココ。そして哀しみから立ち上がり、恋を続けることを選んだ彼女の勇敢さの証に「マドモアゼル」の称号は与えられたのです。
これぞ意志を持ったガーリーの成功例。男達が創るダンディズムの荒波に飲み込まれるのではなく、女の身でありながら丸腰で自ら飛び込む威勢の良さ。これは常にマテリアルだけに終わらない「究極の本物」を探し求め、ついには手に入れたココならではの処世術。ご自身の分析どおり、この畏れを知らぬ好奇心は、FOREVER13(21どころじゃないのがやはり大物)に間違いございません。つか、めちゃめちゃガーリーじゃんかアンタ(呼ばわり)。
...恐るべきコドモ。...恐るべきシャネルという女。
使い易さを信条にしながら、ロマンティックの粉を振りかけるのが得意だったココの生み出した名品は、まるで彼女の心の中で生き続けた恋のように廃れるはずもなく。そのスピリッツが継承された「CHANEL」ブランドが、今でも他とは一線を画す輝くコメットの地位に君臨し、複雑な想いと共に世界中の女子の心の特別な場所にあるというのは、だからとっても納得がいくお話。ま、ココの流儀に乗っ取れば「現実的なことばかりを殿方に求め、自分の満足を最優先させてロマンスに胡座をかいているような女にシャネル製品は似合うはずもない」ということでもありまして。CHANELと聞いて(なぜか)女心がモヤモヤっとしてしまう理由には、こんな手厳しいハードルをなんとは無しに嗅ぎ取っているからなのではないかしらん(違う?笑)。
オンナ達をうっとりさせて止まぬ魔法のメゾン。シャネル社の看板製品の中でも、”らしさ”が感じられるキーアイテムのひとつにイミテーションのパールネックレスがあります。今ではポピュラーなこのBIJOU FANTAISIE(コスチュームジュエリー)もココが発明したというのはご存知でしたか?彼女自身もフェイクと本物のパールをミックスして身につけることを好み、お得意のメンズライクなスタイルや、夜の装いに巧みにコーディネイトした写真がたくさん残されています。その姿は自分のことを「美人ではない(が、そんなことは問題にしてない)」と言い切っていた彼女を大層美しく見せているのもまた事実。
実際、真珠は女性の顔色を輝かせる効果が絶大な宝石で、特に日本人にはその控えめな輝きが潜在的に似合いやすく、シンプルな黒のカシミヤニットや糊の効いた白いコットンシャツにパールアイテムをプラスしただけであ〜ら不思議、女っぷりが一段も二段もアガってしまうことは当店が保証いたします(嘘だと思ったらお嬢様方も是非お試しになってみて)。
ダイヤモンドが宝石界のキングなら真珠はクイーン。別名「月の涙」とも呼ばれ、月の女神のシンボルでもあります。他の鉱物と違い貝殻を傷つけるという作業から生まれてくるため、ナーバスな時に身につけると気分がダウンしてしまう。という説もあるのだとか。ココ自身がこの話を知っていたかどうかは別として、哀しみをフェイクの涙に着替え、本物の涙とミックスさせることで、アグレッシブな本心をエレガントに隠し、シャネル独特のミステリアスな雰囲気を醸し出すことに成功していたのでしょう。ビジネス的な成功ではない、オンナとしての成功を。
愛した男達との別れに人知れぬ涙を流し、それを栄養にして仕事を熟成させ、最期の瞬間まで勝ち抜いたココという負けず嫌いの女。
後継者のカール・ラガーフェルド姐さんは、ココのことを「女の自立のための革命家」と評しています。そしてガーリー魂を武器に人生と戦った13歳の先輩のために「真の革命家とはロマンチスト」と同義語であることを、貴女のガーリー辞書にもそっと加えて頂けたら幸いです。
実際にどう生きたかより、どんな人生を夢見たかが大切。
なぜって、夢は死んだあとも生き続けるから。
翼を持たずに生まれたのなら、どんなことをしても翼を手に入れなさい
- ココ・シャネル -
13歳のアタシの発見者そして留まる理由の発明者である5歳児へ。あなたの翼を信じて
註1*:コスチュームジュエリー/リトル・ブラック・ドレス/シャネルスーツ/マリンルック/ジャージー素材の婦人服/男物のツイード製の婦人服/ショルダーバッグ/シャネルNo.5(香水)
註2*:イギリス人の青年実業家。生涯を通じココの最愛の恋人であった男性。ココをファッションデザイナーへの道に導くきっかけを作り、カンボン通りに帽子店「シャネル・モード」をオープンさせるため資金援助をした。のちに政略結婚のために他の女性と結婚し、ココを失望させるが事故によって亡くなってしまう。
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ファインジュエリーブティックではまさに「Madomoiselle Chanel」と名づけられたラインで本物の真珠もお取り扱いがあります。
