02.01.2010

目は心の鏡。目は心の窓。目は口ほどにものをいう。
古くから伝えられることわざに習っても、我々人類の間にはなにか「目と心は見えない糸のようなもので繋がれている」という感覚があるようです。英語の「I SEE(なるほど)」というカジュアルな表現も、要は「意(=心)を得たり」ってことなので、やはり目と心の密接な関係はグローバル規格であるらしい。
2010年の開店に妄想百貨店がお届けするのは温故知新に固執しがちな当店バイヤーが、オープニングデイからすでに3回も通い詰めているという話題のSF大作「アバター」のヒロイン、ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)。なんと人間じゃないガーリンちゃんの登場です。ナヴィ族(!)のプリンセスでもある彼女は自由奔放で怖いもの知らず。しなやかな肢体と超絶な身体能力を持つ勇敢なハンターであると同時に動物の魂や木の精霊の話が好きなロマンチスト。神秘的な森の中で暮らし、髪の先っぽに生えている結合装置を使って、ツアヒク(註1*)をマザーネイチャーとの間に作ることが出来る正真正銘の森ガールでございます(笑)。
ネイティリの祖国である美しい惑星パンドラにも「I SEE YOU」という挨拶のことばが存在します。これは「あなたが見える、心の中まで」という意味で、さきほどのグローバルな信憑性を裏付けるに値するこの作品の重要なキーワードでもあります。
ところで惑星の名前にもなっているパンドラの語源はご存知ですか?ロマン派ガーリンさんなら、ギリシャ神話の中に登場する美女パンドラが、好奇心に負けて開けてしまった禁断の箱のストーリーを思い出して頂けたのではないでしょうか?箱の中に入っていたのは人間が味わうあらゆる災難と苦労。慌てて蓋を閉めたパンドラによって「未来をすべてわかってしまう災い」だけを残して、他の災いは一瞬にして世界に広がってしまったという恐ろしい話。でもそのおかげで人間は「希望」だけは捨てることなく生きていかれるんだよ。という蘊蓄のあるお話を。
ナヴィ族の文化に入り込むために人類の先進技術が創り出した彼らのアバター。ある理由のためにプロジェクトに参画することになった海兵隊員のジェイク・サリー(サム・ワーシントン)のアバターを助けたこと、そして人間の彼と恋に落ちたことで、ネイティリはまるでパンドラの箱を開けてしまったかのように今まで見たこともない苦難に出会ってしまいます。
部族の大切なホームツリーを地下資源目当ての人間達に破壊され、大切な仲間を失った時の彼女が泣き叫ぶ姿は、文明社会に対する自然の絶叫にも聞こえ、胸をえぐられるような悲しみが心にズシリとのしかかり、出来ることなら自分も人間であることを辞めて、いっそソチラの世界に行ってしまいたいとさえ思う(実際、奥行きのある映像は絵本の中に吸い込まれてしまった気分にさせられます)。
そんな現代人のハートに強烈に響く警鐘をジェームス・キャメロン監督は3Dというインパクトのある手法で「目にモノ見せて」くれたのではないかと妄想するのです。観客ひとりひとりが「I SEE YOU」を実感することへの願いを込めて。
鑑賞した方なら共感して頂けると思いますが、最初はただ人間に似た気味の悪い青い生物であったのが、ネイティリのピュアな魂や、まっすぐな感情表現に触れることで、とてつもなく身近な存在であるような、どう考えても作り物のキャラクターなのに素朴な親近感が湧いてしまうというふしぎ。きっとネイティリに恋をしてしまったグローバル規格な男子も、かなりの割合で存在するのではないでしょうか(隠さんでもヨロシイ)。そしてこの事実はしばらく元気を失っていた映画業界だけでなく、地球にとっても朗報なのではないのか?
巷ではありとあらゆる場所で、動物愛護だ!環境保護だ!と絶望的なほど無数のメッセージが飛び交いすれ違っていきます。今さらアタシが言うまでもなく、それに目をつむって歩くことが出来ない時代なのは映画なんか観なくたって知っている。ガーリン読者であればエコバッグのひとつやふたつ持ち歩いていることでしょうし、ゴミの仕分けにも厳しく、動物と共存することを真剣に考えていることでしょう。もしかすると、なにか外に向けて積極的な活動をはじめている方もいるかもしれません。
今回、当店バイヤーはネイティリを新しいガーリンのアイコンに選ぶにあたってひとつの壁にブチ当たりました。GIRLIN'はモノマガジンです。そして妄想百貨店は百貨店です(当然なわけですが)。なので心身ともに生まれたままで物欲なんてこれっぽちもないネイティリからは、どうひねり出してもおススメのモノがない(苦笑)。
ですが、考えてみたのです。もしかしたらネイティリという女の子は心の中にパンドラの箱を持っていて、その旺盛な好奇心ゆえにそれを開けてみるチャンスを待っていたのではないかと。そしてジェイクこそが、愛するパンドラ星にとって大切ななにか、箱の中に残されるべき「希望」ということに、スピリチュアリストのネイティリは彼と出会った瞬間、感じていたのではないのかと。
地球人の頭の中にはいらぬ情報ばかりが詰め込まれていて、文化交流を試みようとしても自然と共存するためのシンプルな方法が入る隙間がないと嘆くパンドラ星人。そんな彼らにジャーヘッド(註2*)のジェイクは、スカウン(註3*)の自分ならきっと学ぶことが出来ると自信を持って訴えます。そして見事にそれを達成して本物の戦士になった時、ネイティリとの間にあったボーダーラインは消え、心の中までお互いが見えるようになる。二人とも本当に欲しかったモノがわかる。
きっとこの世界すべてが、今までの「アタリマエ」が詰まった頭をカラッポにし、周囲との関わり方をもう一度考え、命あるモノ、作り手が命を注ぎ込んだモノへの愛情を誠実な気持ちで見つめ直し、希望を取り戻すタイミングに来ているのかもしれません。そして今年もまた心の目を駆使してピックアップした数々をご紹介することが、ガーリン星に住む我々ナヴィ族のミッション・インポッシブル。そんな使命感に突き動かされて、今日も明日もあさっても、妄想百貨店はアナタのガーリン心が思わず「I SEE YOU」と言ってしまう価値あるモノをお届けしていく所存です。たぶん(いや間違いなく)。
註1*:パンドラ語で絆の意味(作品中に使われるパンドラ語はキャメロン監督が言語学者と共に作り上げたオリジナル)
註2*:体ばかりで頭は空っぽ=米海兵隊の蔑称
註3*:パンドラ語でバカの意味
Illustration by Yuki Matsushima
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