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カリーヌ・ロワットフェルドのアイライナー
03.02.2009
オンナの種類の中で世界一手強いのは、おそらくフランス人ではあるまいか。格式や伝統を重んじる一方で、たとえ既婚者であっても、恋愛を謳歌することを悪とせぬ自由な空気があるのが「おフランス」。そんな二面性を持つ文化に生まれた彼らが、自己演出に長けているのも当然で、中でもフランス女となれば、男達を目くらます優秀なトロンプルイユ(*註1)アーティストに育ったとしても、なんら不思議はございません。
今回ご紹介するガーリン熟女のカリーヌ・ロワットフェルドは、生粋のフランス女にしてワールドフェイマスなファッションアイコン。01年に仏版VOGUEのチーフエディターに就任するやいなや、売り上げの振るわなかった同誌を画期的なアイデアとセンスで改革し、追従するファッションメディアに衝撃を与えたスゴ腕のセールスウーマンでもございます。老舗の看板に新鮮な空気を吹き込むべく、04年末のスペシャルエディションのゲストエディターにソフィア番長を抜擢したのを皮切りに、翌年はコカイン騒ぎの真っただ中のケイト親方を、その次は、なまいきシャルロットをと、そのどれもがプレミアになるほど、毎年ゴージャスなゲストを迎えてファンを喜ばせたことは、ファッショニスタの皆様のほうが詳しいのではないかと思われます。
16歳の時に人生が退屈になり、始めたモデルの仕事がキッカケで、仏ELLE誌で働きはじめたのがカリーヌのキャリアのスタート。その後はフリーランスのスタイリストとしてマリオ・テスティーノとチームを組み、スパモブームも相まって二人が手がけた数々のセンセーショナルなファッション広告は、アッという間に話題の存在になりました。実は当時、グッチのチーフデザイナーに就任したばかりの若きトム・フォードが、この精鋭チームに熱心に電話をかけ続けた結果、あのGUCCIの繁栄が生まれたというのは業界でも有名な話。カリーヌの独特なエレガンスに惹かれたトムが、広告キャンペーンのみならず、彼女にグッチとYSLの再生のためのコンサルティングも依頼して、カリーヌはトムのミューズとして6年もの蜜月を過ごすことになったのです。そのカリーヌがトムの誘いを受けたのも「彼の作る服に興味があったわけじゃないけど、チャーミングな男だったから」という理由だってんだから、これまたフランス女的でフルってます(笑)。
こんなスーパーキャリアの持ち主なのに、カリーヌ自身は「キャリア」という言葉が大嫌い。ここまでの時間を「Professional Progress=プロとしての進化」と表現しているのが、これまたコムズカしいこと好きなフランス女(苦笑)。彼女の口癖でもある「HATE=大嫌い」リストには、腕時計、ジーパン、Gストリングス、ハンドバッグ、ボトックス、口紅、そして「歳を取ったら革はダメ」との厳しいご発言等々、ファッションビジネスを動かしてらっしゃる立場で、そんなこと言っちゃっていいんですか?ってなくらいの、その偏食家ぶりには関係ないコチラのほうがドキドキさせられてしまいますが、そこは気まぐれなフランス女、たまに言動との矛盾をお見かけするのもご愛嬌(笑)。だからと言って、なんでもかんでも嫌ってみせればオサレ熟女になれるというモンじゃございません。
彼女のトレードマークであるザンバラなストレートヘアとボサボサの太眉、そしてシッカリ縁取ったアイラインにも気迫の秘密があるのでは?そこで今回おススメするのが、カリーヌ先生ご愛用のアイライナー、YSLボーテのロングラスティングアイペンシル No.7。仏語で「ヴィジョンへの鍵」と名付けられたこの7番色が、きっとHATEリスト作成にあたっての目ヂカラを作り、先見の明に貢献しているに違いない。最近のメイクトレンドでも外せなくなっているモードなアイラインも、目周りのインパクトのみを重視して、他は素っ気なく仕上げるのがカリーヌ流。この強弱のバランスを無視した強・強・強のオンパレードが、否が応でも女帝ムードを盛り上げます。
自己のファッションヒストリーをStudio54(*註2)やロックンロールだと語る、トンガった一本気さは個人的にも見習いたい(笑)。「私のつくった服を着る女性に顔をあたえたい」と、ご存知サン・ローランが78年に発表した自立するオンナのためのフレンチブランドを定番にしているあたりもフランス女の心意気。もしかするとトムがYSLの後任を切望し、実現させた影にはカリーヌありき?と、おせっかいな妄想は留まるところを知りません。
プラダを着た悪魔、孤高アナ・ウィンターもヘルメットボブが象徴する鋼鉄のような強さが自慢ですが、最近の売り上げ不振で、女帝カリーヌがいよいよUS版を乗っ取る(?)なんつー、楽しいゴシップも聞こえてきております(ウキキ)。そんなカリーヌはてっきりゴシップ嫌いなのかと思いきや、やはり女帝もヒトの子。どうやらセレブゴシップの魅力には抗えないようで、以前のインタビューで「スカーレット(ヨハンセン)が付き合ってるのって誰だったかしら?ジャスティン?」と、記者に逆インタビューしてたのには、思わず好感を持ちました(大笑い)。
基本は同じミーハーでもトレンドを作る側と追う側の境目は、そのHATEリストにあり。HATEを見極る眼力があるからこそ、揺るがぬスタイルが確立されてゆくのです。
近況ニュースでは仏版Teen VOGUEの創刊にあたって、その編集長の兼任もオフレコで決まっているとか、いないとか。次から次へと華麗なるプロフェッショナルな進化を遂げるカリーヌですが、「編集の仕事が嫌いなのでココに留まるつもりはないの」なんて言っちゃって、あくまでも一筋縄ではゆきません(爆笑)。このパンクな美意識が有り難がられるのも、きっと周囲を煙に巻く彼女のポーカーフェイスぶりに業界が翻弄されているからではなかろうか。実はアタクシもコレを書き終えるや否や「フレンチは嫌い。アタシはパリジャンだから」と、妄想のすべてを一蹴されるような女帝発言を見つけて凹み、同時に「私って見た目より、ずっと善人なのよ」との自画自賛コメントを発見して戸惑った一人(笑)。やはりフランス女の扱いにくさはへヴィー級だな(パリジャンだってば)。フランス女って、やっぱわかんネー。
*註1:トロンプルイユ(Trompe-l'œil)・・・フランス語で目を騙すという意味。シュルレアリスムにおいてよく用いられた手法のトリックアート(騙し絵)のこと。
*註2:Studio54・・・NYアッパーウエスト54丁目のCBSスタジオ跡に77年のオープンした伝説のディスコ。ヴェルヴェット・コードと呼ばれる厳しい入場チェックで86年のクローズまで毎夜、ウォホール、カポーティー、サンローラン、マドンナ、ミック・ジャガー等々のヒップなセレブが集い、当時は音楽、ファッション、アートの発信の場として世界中の注目を集めた。94年に大金をかけてリノベーション後、98年からは劇場として今も健在。
Illustration by Yuki Kitazumi
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日本発売は全6色。アイライナーとしてだけじゃなく、シャドウとしても使えます。
