Vol.12 脚本のないカレー屋と柳宗理

12.08.2008

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深夜2時、よんどころない事情で相方とつかみ合い殴り合い(うそ)のケンカ。近所迷惑だよ。。。実は先日相方と一緒に三軒茶屋に引っ越したばかりなんですが、引っ越して1ヶ月ではじめての大ゲンカ。上に住んでいる人ごめんなさい。。。

翌朝目をさますと、すでにお昼時間を過ぎている。その夜は、実はうちの両親が引っ越し後はじめて家に遊びに来る日。私は手料理をごちそうするべく、ある程度気合いが入っていました。それも前夜のケンカで吹っ飛び、目は腫れぼったいし、やる気ゼロ。

そんな中相方は、「連れて行きたいカレー屋があるから、起きようよ!!」と。「カレーなんか食べたくないし、夜ご飯作らなきゃいけないから時間ないよー」とまだまだやる気ゼロの私。「でも、すごい素敵な所だから、一緒に行きたい!!!」と、とりあえず何でもいいから着て、髪もぼさぼさノーメイクで目はぷっくり腫れてて、半ば病人状態の私は外へと引っ張り出されました。

向かった先は、三軒茶屋から世田谷線で3つめの松陰神社前駅。世田谷線も昔に比べるとすっかりきれいになってしまいましたが、それでも昔の「ちんちん電車」的な雰囲気はまだ残っており、乗っているとちょっと非日常な気分になります。

松陰神社前駅を降りたらすぐの路地裏にあるのが、「贋作インドカリー マシバシイネツルカモ」。
02.jpg一見見過ごしてしまいそうなくらいひっそりとした店構えで、看板もなし。長屋を改装したような作りで、席数も7−8席のこじんまりとしたカレー屋さんです。がらがらっと戸を開けると、そこはなんだか異空間。まるで演劇の中に入り込んだような気分で、一言一言しゃべる言葉も選んでしまうような感覚。隣に座るお客さんも、話の中の一齣で、脚本中の台詞を話しているのではないか、なんて思ってしまう。

男性1人と女性1人の、2人の主人が厨房に立つ。2人の動きも、なんだか1つ1つ計算されているかのような不思議さをもっている。カレーの入っている鍋にお玉をいれ、ゆっくりと回す男性。その横で「トントントン」とキャベツの千切りを作る女性。流れている音楽は、うるさすぎないクラシック。客席のインテリアは、まるで小学校の教室のような机や椅子で構成されており、机の上にはちょっとサビ気味のホーローのトレーが置いてある。そのレトロなトレーの上に乗っているのが、柳宗理のスープスプーン。
01_2.jpgなんてニクイ演出なんだ!!

柳宗理は、戦後日本における工業デザインのパイオニア的存在。もともとは芸大出身の芸術家でしたが、「芸術」を志しながらもデザインや建築の思想に影響を受け、「伝統と創造」をデザインの道で表現する事となっていきました。代表作の「バタフライスツール(1956)」をはじめとして、国内だけでなく海外でも高く評価されている柳宗理のデザイン作品は、パリのルーブル美術館やニューヨークの近代美術館など、海外の著名な美術館の数々に収集されています。

このスプーンは、1982年にその他フォークやナイフとともに発表された作品。使いやすさの中にも、「モダンデザイン」の真理が追究されている名作で、なんだか不思議な形をしているけど使い心地は抜群!という事で有名です。

どこから拾って来たんだかわからないような、レトロさびさびトレーの上に柳宗理のスープスプーン。このギャップがいい。

肝心のカレーはというと。。
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ドライカレー(甘口) 900円
メニューは「本日のカレー」と「ドライカレー」の2種のみ。私は断然、ドライカレーがお勧めです!上にのったキャベツの千切りが、なんだか妙に懐かしさを演出。

そこは、脚本のないカレー屋。まるで演劇の中に迷いこんだような感覚で、自分も演技者に成りすまし、ちょっと懐かしいドライカレーを口にする。決して演出されすぎていない、その「なんとなく」なこだわりが心地よい。前夜からのむしゃくしゃした気分を、一気に忘れてしまいました。

食事が終わり、またがらがらっと戸を開けて外に出ると、「まるで夢のようだった」という感覚に襲われる。それが実は、このカレー屋の名前に深く結びついていたのです。「マシバシイネツルカモ」とは、司馬遼太郎の『世に棲む日々』で高杉晋作が言った言葉と同じらしく、「しばらくの間眠っていたようであるなあ」という意味とのことです。

外からガラス越しに店内を覗くと、そこがまるで「とある演劇の舞台」の様に見えた。しかし、そのストーリーに脚本はないのですけれどね。

贋作インドカリー・マシバシイネツルカモ
東京都世田谷区世田谷4-3-17-101
03-3425-2975
定休日:月曜、第二・第四日曜
営業時間:12:00-15:00、17:30-20:30(土日祝:12:00-20:00)
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