NAVIGATORS : taramoon
マライア・キャリーのパピヨンリング
05.19.2008
1990年の到来と共にスリムな肢体を(ウソじゃありません)ボディコンのミニドレスに包み、カーリーロングを揺らしながら、デビュー曲「Vision Of Love」を歌う彼女をMTVで初めて観た時、あまりのセンセーショナルな登場に「なんとまあ、歌の上手なカワイコちゃんが出て来たもんだ!」と、TVの前で半ば放心状態になってしまったもの。その日からアタシの中のマライアのイメージは「嫌味のないセクシーさとナチュラルな素朴さを併せ持つスゲー歌のうまいアメリカ人歌手」という位置づけになりました。
どうやらこれはマライアの才能を見いだし、開花させたと言われている元夫でCBSソニーの元CEOトミー・モトーラ氏のイメージ戦略に乗せられただけだったわけですが、デビューしてまもなくミリオンセラーを飛ばし、数年後には所属レコード会社のCEOに嫁入りを果たすなんていうシンデレラストーリーの持ち主ですから、自分を売り込むためには犠牲も辞さないミミのガーリン根性は、今考えても相当に座っていたのだと思います。
そもそも彼女自身の商品価値を高めるためにしたような結婚です(知らんけど)。自分が作ったイメージのまま、無難なラインで嫁をキープしておきたい保守的な夫と、若さを持て余し、自分の音楽性も若者らしいヒップホップ系に傾倒していきたいと思い詰めるディーバ体質の妻。なので売れまくれば売れまくるほど、仕事ではボスであり、父親ほど歳の離れた夫のコントロールに反抗し「もうそろそろ一人になりたいかも」と若い彼女が考えたろうことは容易に妄想がつく。そこで自然に確執が起き、自然に決裂していったわけですな。よくあることです。
離婚後のイメチェン第一弾として発表された2001年の「HONEY」の大人っぽいPVでは、衣装のほとんどをトム・フォード時代のグッチに身を固め、スティーレットヒールのまま駆け出したミミが窓から羽ばたくようにプールに飛び込むなんていう象徴的なシーンがあります。そしてこれこそ彼女がバタフライにこだわる理由ではないか?新曲PVで半裸を晒してまで勝ち取ったフリーダムの喜びを世界に発信せんとするその姿は、金満ライフによって精神的にも肉体的にもエナジーアップしちゃったミミを脱皮以前から見ていた人々へセンセーショナルな衝撃映像として映ったはず(苦笑)。
*註1:パヴェ・・・直径2.5mm以下のメレダイヤを隙間なく地金に埋め込んで行く製法。フランス語で「石畳」の意味。
*註2:VVS2・・・ダイヤモンドの中のに傷や混ざり物がどの程度含まれるかを表すクラリティー(透明度)のランク。最高が欠陥無しのFL(フローレス)。VVS(ベリーベリースライトリーインクルーレッド)は、発見困難な微小な欠陥がある上から3番目のランクでVVS2はVVS1の下。
それからの彼女は同レーベルだったジェニファー・ロペスのブレイク、若手ビヨンセの台頭など紆余曲折ありながらも、ナントカカントカ歌姫ポジションをキープ。そしてタトゥはもとより、自分の持ち物にバタフライ柄を刺繍させるほどの入れ込みようで「マライア=蝶々」の定着化にチカラを尽くして参りました。そんな「コレ」と思ったら、何が何でも成し遂げなきゃ気が済まないド根性オンナのミミが見つけちゃったのがヴァンクリーフ&アーペルのオンヴォル。そう、あの豪華なパピヨンリングの正式名でございます。
ヴァンクリーフ&アーペル(通称ヴァンクリ)の歴史は、1896年、オランダのダイヤモンド研磨師の家庭に生まれたアルフレッド・ヴァンクリーフとフランスの宝石商の娘エステル・アーペルが結婚し、1906年に両家が協力し合ってパリのヴァンドーム広場に開店したことから始まりました。宝飾界には切っても切り離せぬ「結婚」という人生のイベントが、ブランドの歴史に深く関係してるというのは、おそらくヴァンクリだけ。あのグレース・ケリーやジャクリーヌ・O・ケネディーのエンゲージリングもヴァンクリ製だったということを知っても、セレブな女達がこのロマンティックなストーリーに心惹かれたことがわかろうというものです。
そしてアメリカンドリームを果たし、今や押しも押されぬ金満セレブとして誰しもが認めるミミのお眼鏡にこのブランドが止まったというのも、やはり自然の成り行きかと(笑)。数年前、パリのリッツホテルに滞在していたミミが、ホテルの並びにあるヴァンクリ本店のショーウインドウに飾られていたオンヴォルと出会った・・・。ただでさえ、蝶々モチーフに目の無いミミが、この贅を尽くしたパピヨンリングを発見しちゃった時のセンセーショナルな驚きは「運命」という二文字にも似た素敵なハプニングだったはず(インタビューでも「運命的な出会い」とは本人語っておりますが)。
このオンヴォル、決して小粒とは言えないダイヤ8石のセッティングにパヴェ(*註1)と言われる装飾で周囲をグルリと囲んでございます。指のうえに優しく止まっているように見せるため、リングにするには大袈裟なくらいのラージサイズのパピヨンを斜めに添えたデザインというのもヴァンクリ職人の高い美意識と伝統芸を持ってこそ出来る細やかなワザ。しかもヴァンクリが採用するダイヤは例えパヴェであってもすべてVVS2(*註2)以上のお品。
さぞかしショーウインドウの中のパピヨン様は妖しく光り輝いて、舞台の上で歌い踊る自分自身を彷彿させたことでしょう。そして蝶々にアイデンティティーを投影し続けて来たミミの自画自賛アイテムとして、こんなにフィットするものは無く、無関係なアタシまでもが感動してしまうほど(笑)。こうして、かつてのアルフレッドとエステルの堅い結びつきのように不思議な縁で結ばれてからと言うもの、ミミは2006年の来日時、成田空港からまっすぐ銀座のヴァンクリに乗りつけて盛大にショッピングしたという逸話があるほどヴァンクリの大ファンに。そしてヴァンクリ社も(おそらく)ミミの大ファンに(笑)。
そして最新のニュースでは、このまま蝶のようにフリーダムで金満奔放な歌姫ライフを謳歌し続けるのであろうという大衆の予測を裏切り、ミミはなんと「11歳年下の黒人イケメンラッパー、ニック・キャノンとの電撃再婚」を発表(!)。ヴァンクリ伝説にあやかったのか(?)離婚直後からB系との交流を積極的に深めてはいたものの、こんなにまでヒップホップに傾倒していたとは・・・さすがセンセーション・アディクトの名に恥じぬ驚き桃ノ木ハプニングです。
今やハイジュエリーだって若いツバメだって「自分のチカラで」どうにでも出来るようになってしまったシンデレラ。その誇らし気な笑顔の中に、行き過ぎたド根性のせいで失ってしまったモノを必死に埋めようとするオンナの性(さが)を見つけ出してしまうのはアタシの老婆心でしょうか。どこか満たされない憂いのあるミミの表情を見る度、これもひとつのガーリン人生なのかな。と、しみじみ思う。
たとえ彼から貰ったダイヤのエンゲージリングが、前婚約者のお下がりと噂されていても、新婚夫婦のツーショット画像が、どう見てもディーバを守るボディーガードにしか見えなかったとしても・・・指に煌めくパピヨンリングがある限り、ド根性ミミの歌声は、今日も明日もあさっても空高く舞い上がって行くことでありましょう。
*註1:パヴェ・・・直径2.5mm以下のメレダイヤを隙間なく地金に埋め込んで行く製法。フランス語で「石畳」の意味。
*註2:VVS2・・・ダイヤモンドの中のに傷や混ざり物がどの程度含まれるかを表すクラリティー(透明度)のランク。最高が欠陥無しのFL(フローレス)。VVS(ベリーベリースライトリーインクルーレッド)は、発見困難な微小な欠陥がある上から3番目のランクでVVS2はVVS1の下。
Illustration by Yuki Kitazumi
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『オンヴォル』リング
Van-Cleef & Arpel
¥3,307,500(2006年10月の店頭価格)
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仏語で「指の間」を意味する「アントレ レ ドア」シリーズの中でも一際ゴージャスな「オンヴォル」リング。ユーロの変動によって定期的に価格改正があるので店頭にてお確かめください。
