キャスリーンのノートパソコン

04.14.2008

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ラブストーリーの結末はハッピーエンドが好き。
我らガーリンの読者なら99%がそんな嗜好の持ち主では?と、妄想いたします。それは現実の恋愛であっても同じこと。せっかく縁があって恋したお相手ですもの・・・そりゃ全てが万事ハッピーであることに越したことはございません。ま、大人になれば世の中そんなに甘くないと悟り、渋い方向に進んで行く恋愛模様にも一抹のロマンを感じたりするものですが、それでも「ラブ」とは「ピース」な存在であって欲しいのが乙女ゴコロ

今回のガーリンさんは「ハッピーエンディング界の女王」メグ・ライアンが演じた「ユー・ガット・メール」のキャスリーン・ケリー。母が残してくれた小さな絵本の店「ザ・ショップ・アラウンド・ザ・コーナー」を営み、空想好きでノスタルジーをこよなく愛するShop girl(キャスリーン)。そして彼女が本音を話せる唯一の相手というのが、チャットルームで知り合ったNY152(トム・ハンクス演じる大型書店チェーン「フォックス・ブックス」のジョー・フォックス)。 

作品を観た方ならご存知のように、二人は現実界ではいがみ合っている商売敵という設定なわけですが、ネット上でしかお互いを知らない(ことになっている)ので、心を打ち解けた素直なメッセージのやり取りには、アタクシも甘い恋の予感を抱き、ジョーと顔を会わせる度、つい意地を張ってしまうキャスリーンにウッカリ自分を投影してたりして「疑似恋愛の坩堝」に巻き込まれたモンでありました。

実はこれ、1940年作品「The Shop Around The Corner」の「文通」を98年版「チャット」にリメイクしたストーリー。そして歴史は(特に恋愛において)繰り返す。タイトルでもある「You've Got Mail」の声で一世を風靡し、地球規模のネットワークと謳われた、かのAOL(アメリカンオンライン)のインスタントメッセージシステムは、90年代のネット界ではちょっとしたステイタスシンボルだったと記憶してますが、今じゃスッカリ過去完了形(苦笑)。しかし映画の全米公開と同時に日本上陸を果たしていたAOL加入者の中には、この作品の影響を受けた方も少なくなかったと思います。

そしてチャットに不可欠なノートパソコンの存在もスイートな二人のケミストリーを引き立てた実に「主役級の役どころ」でありました。マンハッタンでも古風で知的な人種が集まるアッパーウエストの住人である二人の愛機は、キャスリーンが97年に発表されたばかりだった当時の最新マシンApple社PowerBook G3、ジョーがIBM社ThinkPad。ご存知のようにアップル製マッキントッシュは、アーティストの愛用率が高いことでも有名ですが、「地下鉄に迷い込んだ蝶々」のことを報告するようなロマンチストのShop girlに対し、やり手ビジネスマンNY152はヤンエグ(死語?)御用達ブランドという、お互いのノートブックを通して二人が全く違う性格の持ち主だということを表しているのも小粋な演出でした。

この映画ではラップトップのスマートさを、次世代ユーザーへ訴えかけることを狙ったPR戦略の匂いもほんのり漂って来ますが、アップル社製品がどこかチャーミングなムードを持っているのは、けっこう、こんなメディアコントロールあってのことなのか。

実際、アタシもWindowsから、まんまとMacへ乗り換えさせられたPowerBook愛用者だったりするんですけど(笑)Macの何がいいってアータ、一般的に言われているフォントの可愛さや無料アップデートの豊富さ、ウィルスの心配が薄いことに加え、どこで開けても注目されるグッドルッキングな佇まい、そして何より「愛すべきリンゴちゃん」マーク。専門知識どうこうを置いておいても、Macの恩恵を享受できる喜びは、毎日を好きなものに囲まれて暮らしたーい!と望むガーリンさんにピッタリなツールではある(と思うよ)。

あれから10年、更に進化を続けるMacはいよいよインテル搭載というグッジョブを経て、なんと世界最薄、最軽量の「MacBook Air」を世に送り出して来ました。だって「薄さ1.94cm」ですよー(携帯電話なみじゃん)。アタシも今使ってるG4で不都合があるわけじゃないんだけど、やはりアチコチ持ち歩くのには重いんだよなーと思っていたところへコレですから(笑)。まるでネットガーリンの泣き所を知ってるかのようなアップル社の仕事っぷりには頭が下がります。

こうしてテクノロジーの進化と共に恋愛のトレンドも変遷を遂げ、10年前は新しい形だったラブストーリーの主人公「トム&メグのゴールデンカッポー」も、今じゃ過去の遺産。否、ロマコメの伝説(爆)。インターネットという妄想の世界で、非現実的なロマンを語るネット恋愛が90年代のトレンドだったとすれば、そろそろ次の段階は「コンピュータの向こう側にいる相手もまた生身である」と、遠回りした末の気づき?

コンピュータという便利なようで厄介な代物のせいで遠回りを繰り返す恋愛喜劇を「皮肉な巡り合わせ」という「文学的オブラート」で包んだこの作品は、最先端の「テクノロジー」を駆使しながら「アコースティック」なラブストーリーを見せてくれたとも言えます。文学少女キャスリーンの愛読書がジェーン・オースティンの「自負と偏見」と知ったのち、ジョーが自分達のことをエリザベスとダーシーに例えるシーンではこれぞ恋愛の温故知新!と、アタクシ思わず膝を打ったね(笑)。

煩悩に妨げられて目の前にあるモノの価値がわからなくなってしまう人間らしさは、どんなに便利な時代になっても進化出来ないモノ。情報社会に踊らされ、マニュアル的ハッピーエンドを念頭に置けば置くほど恋愛スパイラルは果てしなく、またも遠回りを繰り返す(シツコイ)。現在進行形のテクノロジーと並行してアナログファンが再燃しているように恋愛周辺もまたバック・トゥ・ベーシックへ向かっているのならガーリー評論家としては大歓迎。

案外ジョーとキャスリーンとノートパソコンの物語も、エリザベスとダーシーに習って100年後には「ラブストーリーの古典」になっているかもしれません。とは言え「ネットでしか自分の心を開けない孤独な現代人」なんて囁かれている影で、モノのわかったガーリンはソレはソレ、コレはコレとしてちゃっかりエンジョイしているような気はするんですけどね。 



Illustration by Yuki Kitazumi
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