NAVIGATORS : P.Y.T.
『私は貴兄(あなた)のオモチャなの』岡崎京子
03.24.2008
ある人は、愛はずっと一緒にいることだって言うし、
ある人は、そうじゃないよ、気持ちだよ。って言う。
でも一緒にいなくてもいいじゃんって気もするし?
でもじゃあその気持ちってなに?って思うし?
ってか、ワタシやっぱり愛ってなんだかよくわからないし。
彼のこと好きなのも愛なのかな?
一緒にいたいとは思うけど、
やっぱり他人だから一緒にいても1つにはなれない、って思う。
それって考えるとスゴイ重いし、よくわからないし、疲れる。
でも本当のところ、
ステキなものならないよりあったほうがいいし、
誰かのこと愛したいって思ってはいるみたい。
だって愛って幸せを運んでくるんでしょう?
だから。
愛してるなら愛してるって言って。
今すぐ優しく抱きしめてキスして。
彼女のことは見ないで。
ワタシだけ。ワタシとだけ。
でもそんなことは幸せを運ばない。
でもそれをわかっちゃってて冷めてるとラヴリーにもなれない。
かくして。
「Medlody でっかい恋のメロディ」のトシ(14)はガールフレンドの雪柳とみえに「妊娠した」と告げられ、どう答えていいのかわからず右往左往する。とみえはそんなトシに失望して、真実の愛(トゥルーラヴっつーの?)を求めてトシの元を去る。(それはトシが愛を大切にしなかったから?)
What is Love?
What is REAL?
「Over The Rainbow 虹の彼方に」の花田花(24)は、
会社をクビになり、しかも彼氏のマエダ君と別れたて。
花は親友・由紀ちゃんの恋人でもある男ともだち・谷君と関係を重ねるが、
二人は似すぎていて愛し合えない(なんてね)。
でも由紀ちゃんは、実はフリンにハマってて、谷君はそれを知らないのに。
別にいいけどさ~~~~
谷君ずるいよ
みんなにいいとこ見せようとしてさあ
結局ズルじゃん
あたしもよくわかるもん
あたしもそーゆーとこあるから
でもわかっちゃ
だめだなあ
わかっちゃうとやっぱ
ラヴリーになれないんだよなあ。
「I Wanna Be Your Dog 私は貴兄(あなた)のおもちゃなの」の星山星子(21歳・美大生・うお座・B型)は、初恋の人・空知(そらち)くんに振られながら、1回だけでいいので、公園のボートに2人で乗って、アイスを食べたいと願いつつ、ひょんなことから空知くんの「性のドレイ」として夏休みの1週間をささげる。
あたしの体
自由に使っていいよ
愛とか
好きとか
いらないっす
オモチャにしていいよ
犬になってあげるっす
そして
それでも
あたしは
貴兄(アナタ)をアイスのだ。
なんちて。
「Count Three 3つ数えろ」の塩月弘(29)と旧姓・永田洋子(23)は、結婚し・幸福にこどもをつくり、ひたすら正しい愛に生きる。その間2人が殺害して埋葬した死骸は生涯見つかることなく、夫婦は健康な子どもをつくり・天寿を全うして安らかに・幸せに生涯を終える。2人の愛を理解せず、欲望をむきだしに近づいてきた他者への暴力。けれどもその「欲望」が暴力だったのでは?
世の中にはセックスに過剰に
何かを求める
悲しい人たちが
多すぎるわ
何かを見失っているのよ
愛
愛だけが幸福をはこんでくるのにね
岡崎京子さんのマンガは、いつもわたしたちの日常・愛に、とっても似ていて、いや、似すぎていて、でもじゃあリアルなことを描写しているだけかっていうとそれだけじゃない。
リアルを徹底的に突き詰めると、欲望とか、性とか、セックスとか、死とかが恐ろしく露になってきて、それは普通だと見たくない・聞きたくないようなことがたくさんあったりする。それは居心地が悪かったりもする。でも、それを描写すること自体が何か「生きる」ことの力強い実践みたいになってるんじゃないかっていう気がするし、そういうことによってすごくイノベイティブな作品がたくさん生まれた。
それが、岡崎さんがほかの漫画家との一線を画しているところだと思う。
この短編集には、女の子の愛と資本主義についてのおハナシ『PINK』や『ハッピィ・ハウス』から、「終わらない平凡な日常を生きつづける恐ろしさ」を複数の物語として描いた超・名作『リバーズエッジ』を経てユース・カルチャーを描ききった後の、岡崎さんの新しい局面を予感させる断片がたくさんあって、私は大好きだった。
どこか「終わらない」(生き続けている)ことに対する「ポジティブなペシミズム」みたいなものを漂わせていて、それが今という現実を生きるのにスゴク正しいあり方な気がしたからだと思う。こんなマンガは、いや、映画だろうと、文学だろうと、アートだろうと、そんな境地に達するものは滅多にはない。
驚くべきことに初版は95年。内容は未だに色あせるどころか、時間を置いてより普遍的な存在を感じさせる名作だ。
当時私はトシだったり、星子だったり、洋子だったりした。
今でもそうかもしれない。
そして船はまた行く。
のであって、私たちの冒険や実践は、まだまだ続いている。のである。
Photograph by Mii Sekiguchi
ある人は、そうじゃないよ、気持ちだよ。って言う。
でも一緒にいなくてもいいじゃんって気もするし?
でもじゃあその気持ちってなに?って思うし?
ってか、ワタシやっぱり愛ってなんだかよくわからないし。
彼のこと好きなのも愛なのかな?
一緒にいたいとは思うけど、
やっぱり他人だから一緒にいても1つにはなれない、って思う。
それって考えるとスゴイ重いし、よくわからないし、疲れる。
でも本当のところ、
ステキなものならないよりあったほうがいいし、
誰かのこと愛したいって思ってはいるみたい。
だって愛って幸せを運んでくるんでしょう?
だから。
愛してるなら愛してるって言って。
今すぐ優しく抱きしめてキスして。
彼女のことは見ないで。
ワタシだけ。ワタシとだけ。
でもそんなことは幸せを運ばない。
でもそれをわかっちゃってて冷めてるとラヴリーにもなれない。
かくして。
「Medlody でっかい恋のメロディ」のトシ(14)はガールフレンドの雪柳とみえに「妊娠した」と告げられ、どう答えていいのかわからず右往左往する。とみえはそんなトシに失望して、真実の愛(トゥルーラヴっつーの?)を求めてトシの元を去る。(それはトシが愛を大切にしなかったから?)
What is Love?
What is REAL?
「Over The Rainbow 虹の彼方に」の花田花(24)は、
会社をクビになり、しかも彼氏のマエダ君と別れたて。
花は親友・由紀ちゃんの恋人でもある男ともだち・谷君と関係を重ねるが、
二人は似すぎていて愛し合えない(なんてね)。
でも由紀ちゃんは、実はフリンにハマってて、谷君はそれを知らないのに。
別にいいけどさ~~~~
谷君ずるいよ
みんなにいいとこ見せようとしてさあ
結局ズルじゃん
あたしもよくわかるもん
あたしもそーゆーとこあるから
でもわかっちゃ
だめだなあ
わかっちゃうとやっぱ
ラヴリーになれないんだよなあ。
「I Wanna Be Your Dog 私は貴兄(あなた)のおもちゃなの」の星山星子(21歳・美大生・うお座・B型)は、初恋の人・空知(そらち)くんに振られながら、1回だけでいいので、公園のボートに2人で乗って、アイスを食べたいと願いつつ、ひょんなことから空知くんの「性のドレイ」として夏休みの1週間をささげる。
あたしの体
自由に使っていいよ
愛とか
好きとか
いらないっす
オモチャにしていいよ
犬になってあげるっす
そして
それでも
あたしは
貴兄(アナタ)をアイスのだ。
なんちて。
「Count Three 3つ数えろ」の塩月弘(29)と旧姓・永田洋子(23)は、結婚し・幸福にこどもをつくり、ひたすら正しい愛に生きる。その間2人が殺害して埋葬した死骸は生涯見つかることなく、夫婦は健康な子どもをつくり・天寿を全うして安らかに・幸せに生涯を終える。2人の愛を理解せず、欲望をむきだしに近づいてきた他者への暴力。けれどもその「欲望」が暴力だったのでは?
世の中にはセックスに過剰に
何かを求める
悲しい人たちが
多すぎるわ
何かを見失っているのよ
愛
愛だけが幸福をはこんでくるのにね
岡崎京子さんのマンガは、いつもわたしたちの日常・愛に、とっても似ていて、いや、似すぎていて、でもじゃあリアルなことを描写しているだけかっていうとそれだけじゃない。
リアルを徹底的に突き詰めると、欲望とか、性とか、セックスとか、死とかが恐ろしく露になってきて、それは普通だと見たくない・聞きたくないようなことがたくさんあったりする。それは居心地が悪かったりもする。でも、それを描写すること自体が何か「生きる」ことの力強い実践みたいになってるんじゃないかっていう気がするし、そういうことによってすごくイノベイティブな作品がたくさん生まれた。
それが、岡崎さんがほかの漫画家との一線を画しているところだと思う。
この短編集には、女の子の愛と資本主義についてのおハナシ『PINK』や『ハッピィ・ハウス』から、「終わらない平凡な日常を生きつづける恐ろしさ」を複数の物語として描いた超・名作『リバーズエッジ』を経てユース・カルチャーを描ききった後の、岡崎さんの新しい局面を予感させる断片がたくさんあって、私は大好きだった。
どこか「終わらない」(生き続けている)ことに対する「ポジティブなペシミズム」みたいなものを漂わせていて、それが今という現実を生きるのにスゴク正しいあり方な気がしたからだと思う。こんなマンガは、いや、映画だろうと、文学だろうと、アートだろうと、そんな境地に達するものは滅多にはない。
驚くべきことに初版は95年。内容は未だに色あせるどころか、時間を置いてより普遍的な存在を感じさせる名作だ。
当時私はトシだったり、星子だったり、洋子だったりした。
今でもそうかもしれない。
そして船はまた行く。
のであって、私たちの冒険や実践は、まだまだ続いている。のである。
Photograph by Mii Sekiguchi
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